「あなたは弓においては秀逸なのに、接近戦となると弱いのが難点」
風のような声が葵の耳に囁きかけた。葵がちょっと澄まして、
「これから上達するわ。元璋の技は確かに修得すればかなり有利だけれど、態度が気に入らない。
もう少し弟子を労ることも大切よ。そういう光臨は、偵察はどうだったの?」
光臨と呼ばれた声は一陣の風とともに現れた。
白く美しい長い尾羽をもった鳥は葵の肩に優雅に止まった。
「臨の国は未だ光のない世界となっているわ。
早く残りの剣と勾玉を持つ者を探さないと、『幽世』の者が臨の国に流れ込んできてしまうわ。」
『臨ノ国』それは、高天原である『神世』と死者の住む『幽世』、
そして人間の住む『現世』の交わるところ。
ありとあらゆる魂が必ずその国を通り、ある魂は神世へ、またある魂は現世へ、
と重要な橋渡しを果たす国。
その国を治める者がいない代わりに、
その国々の入口である「門」を守っている「番人」達が事実上その国を統治することになっている。
しかし、その「番人」となる者は三種の神器である、『勾玉』、『鏡』、『剣』の所有者でなくてはならないのだ。
そして、この白金家では『鏡』を所有し『神世』の門を守っているわけ。
残りの二つは一向に現れず、今は葵が一人だけで、
暗黒化している『臨ノ国』の治安を維持しようとしてきたがもう限界に近い。
早く残りの二人を見つけ出さねば。
「光臨、あなたの力を使って見つけ出せないの?」
光臨はう~んと考えて、
「できなくはないわ。ただ本当に正しい人が見つかるっていう確証はもてないわ。言霊がまだ効力を失っていなければ希望はあるとおもうわ」