無題 創作 2010年10月09日 ドサリ 光臨の体が再び倒れ、もとの美しい尾羽をもった鳥になった。 咲哉(さくや)。 夕暮れが次第に西の果てに沈もうとしている頃、一人の女子高生が愛用のアルミ製自転車を川原沿いに猛スピードで走らせていると、後ろのほうから名前を呼ばれたような気がした。キキーっと両手でブレーキを思い切り握り、体重を偏らせて自転車を遠心力によって華麗に回転させて後ろを向いた、が、だれもいなかった。 「なあんだ。空耳か」 よっこらせ、とハンドルを進行方向に再び向かせて今度はゆるゆると走らせて行った。そよ風が川の流れとは反対に吹きつけて彼女の前髪を逆立てた。 [0回]PR