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工場長

時空を駆け巡るマシンはでてこない(。-`ω-)

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無題

「あなたは弓においては秀逸なのに、接近戦となると弱いのが難点」
 風のような声が葵の耳に囁きかけた。葵がちょっと澄まして、 
 「これから上達するわ。元璋の技は確かに修得すればかなり有利だけれど、態度が気に入らない。
もう少し弟子を労ることも大切よ。そういう光臨は、偵察はどうだったの?」
 光臨(こうりん)と呼ばれた声は一陣の風とともに現れた。
白く美しい長い尾羽をもった鳥は葵の肩に優雅に止まった。
 「臨の国は未だ光のない世界となっているわ。
早く残りの剣と勾玉を持つ者を探さないと、『幽世』の者が臨の国に流れ込んできてしまうわ。」
臨ノ国(のぞみのくに)』それは、高天原である『(かみ)()』と死者の住む『(かくり)()』、
そして人間の住む『
現世(うつしよ)』の交わるところ。
ありとあらゆる魂が必ずその国を通り、ある魂は神世へ、またある魂は現世へ、
と重要な橋渡しを果たす国。
その国を治める者がいない代わりに、
その国々の入口である「門」を守っている「番人」達が事実上その国を統治することになっている。
しかし、その「番人」となる者は三種の神器である、『勾玉』、『鏡』、『剣』の所有者でなくてはならないのだ。
そして、この白金家では『鏡』を所有し『神世』の門を守っているわけ。
残りの二つは一向に現れず、今は葵が一人だけで、
暗黒化している『臨ノ国』の治安を維持しようとしてきたがもう限界に近い。
早く残りの二人を見つけ出さねば。
 「光臨、あなたの力を使って見つけ出せないの?」
 光臨はう~んと考えて、
 「できなくはないわ。ただ本当に正しい人が見つかるっていう確証はもてないわ。言霊がまだ効力を失っていなければ希望はあるとおもうわ」

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無題

「弓張り月のなるまえに」
 
  序
 
 ヒュッ
 しんと静まった、明かりひとつない真っ暗な空間の中で、
一本の矢が空を切り裂いて獲物の腹に深く刺さった。獲物は矢とともに霧となって消えた。
 「やったね。これで10は倒せた。今日はこれくらいにしましょう。」
 風のようにはかない声が、その射手にささやいた。
長い年月をかけて育った竹としなやかな梓の木を合わせてつくられた長弓をその細い肩に預け、
長弓を複雑に美しくしならせている細い弦を繊細な指でなぞりながら射手は暗黒を仰いで
 「そうね。」
 と言って、長く黒い髪をそよ風になびかせてどこかへ行ってしまった。
 
 
 「おい、こら起き上がれ! こんなのでへこたれるなんて恥を知れ!」
 きつい罵声が地面に突っ伏している人に浴びせられた。
罵声を浴びせた人は仁王立ちになって突っ伏している人をじっと見下ろしていた。
 「これが由緒正しき(しらかね)家の(あおい)嬢の姿か!
こんな光景を『あの国』の者どもに見られたら一生の恥だぞ! さあ、さっさと立て!」
 葵と言われた人はぴくっと動き、
素早く地面から起き上がると同時にその仁王立ちの人めがけて鳩尾に手刀を一閃食らわせた。
 「ぐっ、ぐはっ」場面は先程の光景とは逆となり、
今度は葵が仁王立ちになって長い漆黒の髪についた土埃を振り払って言った。
 「その口を閉じなさい。元璋(げんしょう)。白金家を罵倒することは一切許しません。
たとえ私の師であるとしても、
そのような言葉を吐いたらあなたの喉笛を切り裂くだけではすみませんよ」
 元璋と呼ばれた者はひっと言って、すぐさま人の姿から白い光の塊になって消えた。

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